2015/7/30 ウートピ「女子大生を騙し強制的にAV出演 性を売る文化が発達する日本の「人身取引」の実態」

2015年7月30日(木)から7月31日(金)にかけてウートピに、代表藤原と広報マネージャー 瀬川のインタビュー記事が掲載されました!是非ご一読ください!!

<以下、本文を転載>

【前編】
女子大生を騙し強制的にAV出演 性を売る文化が発達する日本の「人身取引」の実態

日本で行われている「人身取引」とは?

「日本で人身取引が行われている」――こう聞いて意外に思う人は多いかもしれない。多くの日本人にとって「人身取引」(※)という言葉は耳慣れないものであり、どこか遠い国で行われている犯罪を想像する人が多いだろう。しかし、「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」の推定によれば、若年女性や子どもの強制的なポルノ出演や売春などの性的搾取被害を受けている若年女性や子どもはおよそ5万4,000人。実態の深刻さを訴え、警察による被害実態の把握を求めている。

日本国内での人身取引被害者とは、どのような人たちなのか。また、どのように救うことができるのか。「ライトハウス」代表の藤原志帆子さん、広報・アドボカシーマネージャーの瀬川愛葵さんにお話を聞いた。

(※)人身取引とは……「現在の奴隷制」とも言われる。1980年代から世界各地で急増し、目的はさまざまで、強制的な労働、臓器摘出、性的搾取、養子斡旋など。日本における人身取引は売春問題と密接に関連していることが指摘されている。

日本で唯一、人身取引を専門とする窓口

日本で行われている「人身取引」とは?

――まず、活動を始めたきっかけを教えてください。

藤原志帆子さん(以下、藤原):きっかけはいくつかあるのですが、アメリカの大学で学んでいた頃の経験が大きいです。日本からの社会人留学生が、「アメリカって日本みたいに風俗店がない。探したら他のアジア系の女性がいるところしかなかったよ」と堂々と文句を言っていて、びっくりしました。彼は政府に勤めている真面目そうな人でしたし。また、問題意識を共有すると、タイから留学生している友人は「タイには、日本人やドイツ人がたくさん小さな子どもを買春するために来ている」とも打ち明けてくれて、自分がそれまでその事実を知らなかったことを恥ずかしいと思いました。

卒業するまでにいろいろなボランティアをしていたのですが、その中で人身取引や性的搾取に関する問題を考えるNPOポラリスプロジェクト(現:ポラリス)の取り組みを知って、インターンとして活動に参加しました。10か月後に職員となり、2004年に日本でポラリスプロジェクトジャパンを起ち上げました(その後、2014年にライトハウスに改名)。

瀬川愛葵さん(以下、瀬川):私もアメリカの大学に入って、そこで日本の人身取引について知りました。この問題を解決したいと思って調べたら、ライトハウスは日本で唯一、人身取引被害者を専門とする相談窓口を運営する団体でした。去年の春からインターンをして、その後スタッフになったんです。

藤原:アメリカで活動していた頃、たとえばポラリスや他のNPO団体が議員やメディアを巻き込んで政策を変えていくのを見ていたので、同じことを日本でもやっていきたいと漠然とビジョンを描いていたけれども、そんな簡単なものではありませんでした。やっと活動が広がりはじめたのもここ1~2年です。

売春を強要される女性たち

――日本での活動が難しかったというのは、どういうことでしょうか?

藤原:もともとアメリカではこの問題に対する理解が早いですし、問題への反応も大きいです。奴隷制度という悲しい歴史があって、今もそれが色濃く残っているので、「現代の奴隷制」と言われる人身取引に対して行動しなければと考える人が多いと考えます。また、キリスト教徒の方も多い国なので、売春をさせられている子どもがいるという事実について世論が盛り上がりやすいですね。

日本は、アメリカよりも性を売る文化、性産業が発達していて(※)、性の売買に関して大らかと言われています。強制的に働かされている被害者がいると訴えても、「好きでやっている人だけでしょ?」「日本ではそんなことはない」という意識が強いのではないでしょうか。また、私たちが解決したい人身取引は性にまつわる話です。日本人は性の売買についてはおおらかである一方で、本当の性に関する情報や性教育はタブー視しがちです。メディアに取り上げてもらうのに苦労したこともありました。

(※)「日本人のHIV/STD関連知識、性行動、性意識についての全国調査」(京都大学大学院医学研究科国際保健学/厚生省HIV感染症の疫学研究班行動科学Iグループ/1999年)では、「日本人男性の買春率(>10%)は欧米諸国(数%程度)に比して著しく高いことが明らかになった」と指摘されている。

――日本での活動を始められた2004年頃と現在とで、状況は変わっていますか?

藤原:ライトハウスが出会う人身取引の被害者はすごく変わってきました。米国務省は、毎年発表している人身取引年次報告書で、日本の人身取引の実態について「被害者の目的・供給・通過国になっている」と批判しています。日本での活動を始めて最初に出会ったのはフィリピンからの女性でした。興行ビザ、別名芸能ビザと言われる悪名高いビザで入国する外国人女性が一番増えてきたのがこのころです。被害に遭う女性たちは、パブなどで働かされて、売春を強要されていました。

最近の傾向では日本人も被害に遭うことが多く、加害者の傾向も変わってきていると思います。これは警察の統計からも同じことが見えてきています。

――加害者の傾向が変わってきているというのは?

藤原:タイやフィリピンの人が日本で被害に遭う場合、加害者も外国人という場合が多かったと思います。もしくは、外国籍の女性と結婚して夫婦でブローカーをしている日本人だったり。

それが今、日本人の女性を被害に陥れているのは、悪質なホストやスカウト、表立ってはしっかり届出を出しているような風俗店や知名度のあるアダルトビデオレーベルと言えます。経済基盤が脆弱な若年女性や、児童福祉施設出身で、そもそもの社会的な支援の少ない女性に対して、ナンパや、モデルへの勧誘、圧倒的に割りの良いアルバイトという形で声をかけて、騙して性産業に取り込み、アダルトビデオに強制的に出演させたり、売春をさせたり……というような例です。

女子大生が騙されてAV出演……

――4月に船橋で18歳の女性が殺害・遺棄される事件がありました。この女性が事件前、ホストクラブで100万円のシャンパンタワーを頼んでいたと報道されましたね。

藤原:ライトハウスにも、ホストクラブがらみで、やりたくない仕事を強要されそうだ……という相談はあります。やり口を聞くととても巧妙ですね。彼女が好意を抱いているホストから「お金なんていいから。僕のノルマのために君の名前でシャンパンを入れて」と頼まれたからそうしたら、後日店長が来て「15万払って」と。彼女が「彼は自分の給料で払うと言ってた」と説明しても「何言ってんの?」。

とても組織的で、ターゲットを見つけるのがうまいのだと思います。家庭環境が不安定だったり、頼れる人がいなかったり、刹那的な生き方をしている女性を見抜くんですね。加害者側は、どの女の子が首を縦に振るか、どの女の子が助けを求められない子か、わかって選んでいると思いますよ。

――これまで相談を受けた中ではどのようなケースがありますか?

藤原:女子大生が街中で「有名なモデルさんの撮影があるから見に来ない?」と声を掛けられ、郊外のペンションに誘われてついていったそうなんです。車で連れて行かれて、到着したら「荷物は車に置いたままでいいから」と言われてメイク室に入ったら、「次に撮影するのはあなただよ」と言われたと。なんのことかと思ったらアダルトビデオの撮影だったんですね。

「そんな話は聞いてない」と言っても、「もうプロのスタッフが20人集まってる。これが解散したらいくらになると思ってるの?」と言われる。携帯電話もないから警察も呼べないし、部屋に窓もないし、「この部屋から出たら合意したってことだから」と言われたそうです。彼女はライトハウスを見つけて相談に来てくれて、なんとかビデオが出回る前に販売中止にすることができましたが、そうできるケースはなかなかありません。

http://wotopi.jp/archives/24466 より転載>

【後編】
「中学生の弟も性被害に遭った」 被害者5万4,000人にも上る、日本の性的搾取の実態

性的搾取の被害実態が把握されていない理由

日本でも行われている「性的搾取」というかたちでの人身取引。前編では言葉巧みに女性を騙し、アダルトビデオに出演させるケースを聞いた。「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」代表の藤原志帆子さん、広報・アドボカシーマネージャーの瀬川愛葵さんに引き続きお話を聞く。

被害者を「合意」させる悪質手口

――「ついて行く方が悪い」と被害者の落ち度を責める声もあるのでしょうが、騙す方は慣れているから言葉巧みなのでしょうね。

藤原志帆子さん(以下、藤原):有名な大学の大学生でも騙されてしまいます。最近は若い男性の被害も増えてきました。加害者の手口や洗脳の仕方は非常に巧妙で、被害者が断る理由をいくつ並べても、説得させられてしまうのです。

また、こういったケースの場合、警察へ行っても「警察では介入できないから、何かやるとしたら弁護士さんと相談して民事として解決するしかないのでは」と言われることが多いです。加害者はまず、被害者に対して「アンケートに答えて」などと偽り、契約書にサインをさせます。この契約書にサインしていることで、法律的には合意しているように見えるんですね。証拠としても、合意があるように一見見えてしまうような、加害者側にとって都合の良いLINEやメッセージのやり取りしか残されていないことがほとんどです。

被害者が未成年である場合や、監禁されていたことを証明できる場合は警察も動きますが、証明できないことも多いです。今朝も一件、こういった相談がありました。最近は月に4,5件の新規相談がありますね。

瀬川愛葵さん(以下、瀬川):できることなら警察が介入し、刑事事件として動いてくれるのが理想です。でも現状では、被害届すら受け付けてくれない警察署も多いです。加害者側もそれを全部わかってやっているので、被害者は泣き寝入りさせられてしまいます。

また、ポルノ出演の被害の場合、誰にも見られたくない動画やDVDがネットを経由して今にも売られてしまうかもしれない、というとても切迫した状況です。その状況で加害者は、販売を差し止めたいと訴える被害者に対して、「違約金を払うなら販売しない、払えないのなら販売するしかない」などの不条理な要求をするのです。

何百万、何千万の違約金を要求され脅されたら、とくに社会経験の少ない若い被害者は、諦めるしかないと思ってしまいますよね。私たちのような団体スタッフが同行し、警察や弁護士、またときにはAVプロダクションの事務所などへ行けば対応も少し変わるのですが、当事者が一人で動くことはとても危険です。訪れた警察署や弁護士事務所などで「あなたにも落ち度がありますよね?」と言われ、被害者が二次被害に遭うことも、これから防ぎたいですね。

東京五輪までに状況を変えたい

藤原:外国籍被害者の場合は、さらに自ら声をあげることが困難かもしれません。

――それはなぜですか?

藤原:たとえば、女性が温泉街にあるパブのようなところで売春を強要されていることがあるのですが、言葉の壁がありますし、自分の体を買いに来る日本人と同じ日本人である私たちを信じるのは難しいですよね。また、経済的な理由で仕事を求めて自ら日本へ来たけれど、売春させられたり、単純労働の現場で酷いセクハラを受け、帰国したいけど途中で帰ったらペナルティが発生して借金を負わされてしまう、という状況にある場合もあります。(ビザが切れるまで)監禁状態で働かされていたことを言えないまま、強制送還された女性もいます。

――そういう被害に遭っている外国人女性をどうやって見つけ出すのですか?

藤原:非常に難しいですね。本人や家族や一緒に働いている人から連絡が来るという場合もありますが、それは少し英語や日本語が話せたり、どうにかして家族や友人を介して支援機関や警察にSOSを出すことができたりした女性。なかなかそのような環境にある人は少ないです。

やはり、人身取引に関する法的な枠組みが必要だと思っています。2020年に東京オリンピックが行われるまでに建物も立つし、労働力の需要も高まるし、世界中から人が集まり繁華街も賑わう。さまざまな人の動きがあると思います。それまでに人の移動によって増える傾向にある人身取引や性売買の需要に対して、被害を防ぐために、他団体とも力を合わせて政策提言の活動をしています。

――アメリカの国務省から人身取引を激しく非難されたことなどをきっかけとして、2005年に人身売買罪が新設されています。こちらでは法的な枠組みとして不充分なのでしょうか?

藤原:人身売買罪は金銭を提示して人を売り買いすることを禁止する法律です。売春やポルノ出演を強要するような「搾取」に関する罪ではありません。

――訴えに耳を貸してくれる議員はいるのでしょうか?

藤原:与党でも野党でも、若い女性や子どもがターゲットにされているということで感度が高い人もいます。継続的に問題意識を持ってくれる議員の方と、これからつながっていくことを目指しています。

瀬川:日本で人身取引はどれほどの規模で行われているのか。これまで話してきたような理由から、実際に被害者として警察が把握する数はその被害規模の氷山の一角です。諸外国はそれでも今起きている人身取引の推計を作っています。日本に関しては、公的な推計はありません。

女子高生から「自分の弟も被害にあった」

性的搾取の被害実態が把握されていない理由

――ライトハウスでは国内での性的搾取被害者を5万4,000人と推計していますね。

藤原:これは最も劣悪な被害を想定した控えめな数字だと思っています。本当は政府に人身取引の規模について調査し、その数を発表してほしいのですが……。

瀬川:ただ、もし政府が推計を出しても数百人にもいかないのではないかと思います。警察が動く人身取引被害者のケースは非常に少ないです。政府は「搾取する目的で暴力や強制力などを使った場合」という基準を使っていますが、それを証明するのが先ほども申し上げた通り非常に難しいです。そもそも、被害者自身に被害を証明する責任がある現状を変えていかなければと考えています。

政府が発表している人身取引被害者の人数は年間25人(※)です。でも、私たちのような小さな団体に寄せられる相談だけでも、その数を上回っています。届いていない声が多いのではないでしょうか。

(※)「人身取引対策推進会議」が取りまとめた報告書(2014年)による。すべて女性で、18歳未満が7人。国籍別では日本人12人、フィリピン人10人、タイ、中国、ルワンダが各1人。

――現場に行って、危険な目に遭うことはないのでしょうか?

藤原:私たちは加害者ではなく困難を抱える被害者のSOSをまず聞いてから、警察や弁護士、ほか機関とともに動くことが多いので、危険な目に遭ったことはありません。しかし、被害者を助けるために連絡を取って落ち合う際は、気を張りますね。本人を支配する人間が近くにいるかもしれません。

――知らないうちにポルノに出演させられるなど、中高生が被害に遭った実際のケースをマンガで紹介した『BLUE HEART~ブルー・ハート~』を今年2月に発行されました。

藤原:マンガにすることで問題を子どもたちも含め多くの人に知ってもらいたいと思いました。マンガの中では3つのケースを扱っていますが、そのうち1人は男子中学生の被害です。これを読んだ高校2年生の女子生徒から「以前自分の弟も性被害に遭っていたので、特にこのエピソードは男子にも読んでもらいたい」という感想をもらいました。

被害が起こらない社会、被害にあっても彼らが守られる制度にしていくためには社会の意識を変えることが必要です。いろいろな方法で問題を伝え、広めていきたいと思います。この2、3年がカギになると思っています。

ライトハウス
相談電話 ▶ 0120-879-871(月~金 10:00-19:00)/ 相談メール ▶ soudan@lhj.jp

●藤原 志帆子(ふじわら・ しほこ)
特定非営利活動法人人身取引被害者サポートセンター「ライトハウス」代表。2004年に同団体の日本事務所(ポラリスプロジェクト・ジャパン)を設立し、日本国内の人身取引をなくすために、多言語の電話相談による被害の発見と救済事業を開始。2012年、雑誌『AERA』の「日本を立て直す100人」に選出される。●瀬川 愛葵(せがわ・あいき)
特定非営利活動法人人身取引被害者サポートセンター「ライトハウス」広報・アドボカシー マネージャー。2013年に大学を卒業後、半年間のインターンを経て、2014年10月より、NPO法人人身取引被害者サポートセンター ライトハウスに入団。2015年5月より現職。

小川 たまか/プレスラボ
http://wotopi.jp/archives/24471より転載>