2016/11/16 日本経済新聞 「奪われた尊厳(下) まだ小さい「救いの手」」

2016年11月16日(水)日本経済新聞夕刊に、記事「奪われた尊厳(下) まだ小さい「救いの手」」が掲載され、ライトハウス発刊のマンガ『BLUE HEART』が紹介されました。是非ご一読ください。

*****

奪われた尊厳(下) まだ小さい「救いの手」
リスク知る教育 不可欠
2016年11月16日

東京都内のビルの一室。昨年暮れ、NPO法人「BONDプロジェクト」の事務所で、代表の橘ジュンさんが女性(20)と向き合っていた。

「嫌なら辞めな」「でも店を追い出されたら住む所がないし……」。風俗店に勤めていた女性はアダルトビデオ(AV)への出演を強要され相談に訪れた。しかし住み込みのため生活拠点がない。橘さんは同法人のシェルター(保護施設)への避難を助言。女性は半年後に正社員の職に就き、自立した。

AV出演を強要された女性、児童ポルノまがいの撮影会に臨む小中学生……。意に反して性的画像を撮られる被害への社会的関心は高まりつつあるが、実態は表面化しにくい。背景の一つが支援体制の脆弱さだ。

性犯罪や家庭内暴力の被害者に対するサポートは整備されつつある。2010年以降、相談から救済までを担う「ワンストップ支援センター」が全国の自治体などに整備された。ただAV出演トラブルは、こうした救済や支援の枠組みからは漏れがちだ。

ある被害者支援団体の幹部は「AV業界の仕組みや契約に関する知識が必要で、継続的な支援は難しい」。被害に遭った別の20代女性は「どこに相談すればいいか分からなかった」と明かす。

被害を「自己責任」として批判する風潮も根強い。橘さんは「立場の弱い女性や少女が被害に遭っている現実に目を向けるべきだ」という。「企業のセクハラ研修で児童ポルノなどの問題を取り上げることも必要」(児童ポルノ問題に詳しい千葉大の後藤弘子教授)と、受け手側の意識改革を促す声もある。

被害を防ぐには、若い女性がリスクを把握するための教育も欠かせない。

AV問題に取り組むNPO法人「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」(東京)は昨年から、被害例をまとめたマンガを約8千冊作り、配布を始めた。女子高校生が高収入のアルバイトにつられて性産業に取り込まれていく過程などを解説する内容だ。

性暴力防止の啓発活動をするNPO法人「エンパワメントかながわ」(横浜市)は、児童ポルノ被害などを題材にした劇を学校で上演し、話し合うワークショップを開く。中高生らが年2万人参加した。「女性や子供に実態を伝え、嫌なことは断り、自分を守ってくれる法律があることを教えたい」(池畑博美事務局長)。被害根絶への取り組みは緒に就いたばかりだ。

http://www.nikkei.com/article/DGKKZO09594600W6A111C1CC0000/